2023年8月20日(日)宮城県フォレスト仙台にて、スタディグループ勝史塾による創立12周年記念講演会が「”歴史”から導き出す現代最高峰の総義歯 ー究極の”咬合採得”と”印象採得”の実演ー」をテーマに掲げ開催された。創立9周年及び10周年記念講演はコロナ禍のためWebinarによる開催であり、現地開催は2019年に行なった創立8周年記念講演会以来と実に約4年ぶりとなったが、会場も満員となる総勢80名余りが集い、真夏の野外にも勝る熱気の中で行われた。

 初めに総義歯の分野において大きな実績をあげている塾長・佐藤勝史先生(山形県)より本講演内容の趣旨の説明があった。「当スタディグループにて、日本の無歯顎補綴治療を担ってきた偉人達の書籍からトピックスを“時系列”に羅列することにより治療法の変遷を調査し、それを踏まえた上で我々が現時点で最良と考える”咬合採得”と”印象採得”を実際の患者を招き、デモンストレーションを行う」といった内容である。著書の中からは、義歯製作方法の特徴・義歯製作の流れ・印象採得方法・咬合採得方法・人工歯の咬合接触や配列基準・バイラテラルバランスの付与の有無・重合法などの内容をピックアップし、様々な著書の内容を比較することにより、時代の経過とともに変化する治療法を閲覧することが可能となる講演であった。

 講演では9名の演者(山形県)が対象となる著書を二人ずつ担当し、永田一樹先生が「河邉清治先生」と「諏訪兼治先生」を、貝和隆史先生が「矢崎正方先生」と「横田亨先生」を、青木真一先生が「村岡博先生」と「村岡秀明先生」を、筆者が「染谷成一郎先生」と「阿部二郎先生」を、後藤光成先生が「丸森賢二先生」と「近藤弘先生」を、笹原将則先生が「阿部晴彦先生」と「河原英雄先生」を、安達 隆帆先生が「中尾勝彦先生(桜井唯次先生)」と「深水 皓三先生」を、大泉博史先生が「加藤武彦先生」と「小出馨先生」を、神部毅先生が「小林義典先生」と「塩田 博文先生」を取り挙げ、時系列に沿って総勢18名の義歯の偉人についてまとめ発表した。

 最後に総括として再度、佐藤勝史先生が登壇し、まとめを行った。印象採得の大きな分類として、患者主導型に行う閉口機能印象、治療用義歯とテッシュコンディショニングを利用した印象法、術者主導型によるコンパウンド印象法を挙げられた。また咬合採得では確立された一つの方法があるわけではなく、様々な方法が利用されていることなどが明らかとなった。

 それらを踏まえた上で「推奨する咬合採得・精密印象採得の技法」を実演した。咬合採得を行う際の咬合床の高径を平均値で製作すると、実際の患者では修正に手間と時間がかかることが多いため、簡易咬合採得を行ない適切に近い高径で咬合床を製作し咬合採得する方法を推奨し、勝史塾塾頭である永田一樹先生が簡易咬合採得の手技を披露した。また下顎精密印象では、経験の浅い歯科医師でも辺縁封鎖の得られやすい患者主導で行う閉口機能印象である「吸着印象法」を佐藤勝史先生自ら実演し、大盛況の内に幕を閉じた。

 歯科の歴史に触れ、今の自分の診療方法を見つめ直す良い機会となった講演であった。

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